近年、「アナリティクスエンジニア」という職種が世界中のデータチームで注目を集めています。dbt Labsが2024年に発表したレポート『The 2024 State of Analytics Engineering』では、アナリティクスエンジニアが「データ活用を組織に定着させる戦略的な担い手」として明確に位置づけられており、企業にとって不可欠な存在として定義されています。
一方、多くの企業では依然として、「必要なデータにすぐアクセスできない」「分析作業が特定の担当者に依存している」といった課題を抱えており、データの保有量は年々増加しているにもかかわらず、それを効果的に活用するための仕組みが整っていないのが現状です。
こうした背景から、ビジネスとデータの橋渡し役として、アナリティクスエンジニアの役割が注目されています。本記事では、その定義や業務内容、データエンジニアとの違い、組織への導入メリット、さらには海外・国内の実践事例までを包括的に紹介します。
【目次】
アナリティクスエンジニアとは?
アナリティクスエンジニアとは、「分析しやすいデータ環境を整備する」専門職です。データパイプラインの整備や、分析用データセットの作成、BIツールとの接続設計などを担い、分析者やビジネスサイドが効率的かつ信頼性の高いデータにアクセスできる環境を整備します。
使用ツールには、BigQueryやSnowflakeなどのクラウドDWH、SQLやdbtによる変換処理、Looker StudioなどのBIツールが含まれます。アナリストのように直接的に分析や示唆出しを行うわけではなく、その前提を支える仕組みを整える職種です。
データ組織における役割
従来のデータ組織においては、「データエンジニア → アナリスト」という直線的な流れで役割が語られることが多くありましたが、近年はその構図も変化しつつあります。アナリティクスエンジニアは、データ基盤と分析の橋渡し役として、横断的かつ補完的に機能する中核的な存在です。
職種 | 領域 | 主な役割 |
---|---|---|
データエンジニア | データ基盤の構築 | データ収集・加工・ETL |
アナリティクスエンジニア | データの整備・モデリング | 分析しやすい構造整備・KPI設計 |
データアナリスト データサイエンティスト | 分析・活用 | 示唆抽出・レポート作成 |
業務は連続しており、役割も柔軟に重なり合っています。そのなかでアナリティクスエンジニアは、整備と翻訳の役割を同時に担います。
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アナリティクスエンジニアの業務内容とは?
アナリティクスエンジニアの業務は、単にデータを扱うだけではありません。
分析環境の整備や可視化支援、部門間の連携まで幅広い役割を担う、非常に実践的でハイブリッドな職種です。業務範囲は、データ取得後の整備からビジネス部門が活用するための最終アウトプット設計まで多岐にわたり、実際の業務内容は企業によって異なるため、一概には定義できない部分も多いです。
そのため以下では、フェーズ別に業務内容を整理し、それぞれの具体的な役割や価値について詳しく紹介します。
① パイプラインの設計・運用とデータモデリング
アナリティクスエンジニアは、ETL/ELTパイプラインの設計や実装にも関わります。
特に、dbt(Data Build Tool)やAirflowなどを活用し、データの変換処理や自動実行の仕組みを構築・運用することで、継続的に分析可能なデータを供給します。
また、KPIや集計定義に基づいたデータモデリングも重要な業務の一つです。たとえば、複数部門が同じ「売上」や「ユーザー数」を見ても数値がズレないよう、共通ルールで整備されたデータマートを設計します。こうした再現性のある環境整備により、分析作業の信頼性が高まります。
② BIツール連携とセルフサービス支援
BIダッシュボードとは、ビジネスに必要な指標(KPI)をグラフや表で見えるようにする「数字の見える化ツール」です。アナリティクスエンジニアは、構築したデータモデルをそのBIツール(Looker Studio、Tableau、Power BIなど)と連携させ、現場部門が自らデータを参照・活用できる仕組みを整備します。KPIのダッシュボード化や閲覧権限の設計、更新タイミングの最適化などを通じて、「データを見たいときにすぐ見られる」環境を提供します。
たとえば営業チームが「今月の売上をすぐに知りたい」といったときに、すぐ確認できる仕組みを用意するのがこの仕事です。リアルタイムで更新されるように設定したり、部署ごとに表示内容を変えたりと、ユーザーにとって使いやすいダッシュボードづくりが求められます。
③ アドホック分析対応と業務自動化
日々の業務では、「この条件で絞ったユーザー数を出してほしい」「施策前後で行動に変化があるか見たい」といった突発的な分析依頼(アドホック分析)が発生します。アナリティクスエンジニアは、これらの依頼に対し、迅速にデータを抽出・整形・提供します。
また、同様の依頼が繰り返されるケースでは、PythonやSQLでのバッチ処理や集計の自動化を行う場合もあります。
なお、より高度な統計解析や仮説検証、機械学習モデルの設計などは、データサイエンティストが担う領域であり、アナリティクスエンジニアとは役割が補完関係にあります。
④ 他部門との連携とデータ文化の浸透
アナリティクスエンジニアは、エンジニアリングだけでなく“社内コンサルタント的な役割”を担う場合もあります。マーケティングや営業、人事などの各部門と連携し、業務課題をヒアリングしながら、必要なKPIやダッシュボードを整備することで、ビジネス側の課題をデータの形に翻訳する力が求められます。
さらに、データ活用を社内に定着させるため、トレーニングやハンズオンの実施、ドキュメント整備、ワークショップ開催などを通じて、組織全体のデータ文化を育成するという側面もあります。
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データエンジニアとの違い
アナリティクスエンジニアは、しばしばデータエンジニアと混同されますが、両者の担う役割には明確な違いがあります。
データエンジニアは、データの収集・蓄積・加工といったインフラ寄りの業務を担うのに対し、アナリティクスエンジニアはその加工されたデータを、分析しやすい形へと再構築・モデリングする役割を持ちます。
項目 | データエンジニア | アナリティクスエンジニア |
---|---|---|
主な目的 | データ基盤の構築・保守 | 分析の効率化・自動化 |
技術スタック | Python、Spark、ETL | dbt、SQL、BI |
関与範囲 | データ収集・加工 | 分析前の整備 |
このように、両者はデータ活用の異なるフェーズに関わっており、どちらもデータ分析においては欠かせない存在です。役割は異なるものの、密に連携しながら成果を出していくことが求められます。
データアナリスト・ データサイエンティストとの違い
アナリティクスエンジニアは、データアナリストやデータサイエンティストとも一部領域が近いため、しばしば混同されることがありますが、役割の本質は異なります。
アナリストやサイエンティストは、整備されたデータをもとに仮説を立てて検証したり、統計解析や機械学習モデルを構築して意思決定を支援する「分析者」です。たとえば、施策の効果測定、将来予測、ユーザー分類といった“価値の抽出”が彼らの主戦場です。
一方、アナリティクスエンジニアは、その“分析ができる状態”をつくる役割を担います。KPIの定義整備、データマートの設計、パイプラインの構築、BIツールとの接続、自動化などを通じて、「すぐに・正しく・再現可能なデータ」を安定供給するのが責務です。
つまり、アナリティクスエンジニアは「分析する人」ではなく、「分析しやすいデータに整える人」であるため、両者は明確に異なる役割を担いながらも、データ活用を前提とした現場では補完し合う協働関係にあります。
アナリティクスエンジニア活用のメリット
アナリティクスエンジニアを組織内に配置することにより、単なる「データ活用の効率化」だけでなく、意思決定のスピード・精度、さらには部門間の連携体制にまで好影響をもたらします。以下では、ビジネスインパクトの大きい3つのメリットに絞って解説します。
ラクスパートナーズの参画事例
ここでは、ラクスパートナーズのアナリティクスエンジニアにおける参画事例をご紹介します。
国内大手ECプラットフォーム運営企業
課題
- データを扱える人材が不足しており、分析・可視化業務が属人化していた
- 商品情報の入力値が最適化されておらず、業務効率が悪かった
- 他部署間でのデータ整合性や定義の不一致が業務の妨げになっていた
施策
- BigQuery × Looker Studio によるダッシュボードの整備・改修を実施
- 商品管理に関する入力値の最適化を目的としたデータ構造の見直し
- 複数部署のデータを突合・整形し、整合性を担保する分析支援を実施
効果
- 可視化の仕組みが整ったことで、ビジネス部門がリアルタイムに状況把握可能に
- 商品データ入力の効率が向上し、現場の業務負荷が軽減
- 部門間のデータのズレが解消され、意思決定の精度が向上
まとめ
アナリティクスエンジニアは、単なる分析者でもエンジニアでもなく、「分析しやすい状態をつくる」ことに特化した職種です。組織がデータドリブンに進化していくうえで、データ活用の基盤を整える存在として不可欠です。
今後、データ活用の質とスピードを高めたい企業にとって、アナリティクスエンジニアの配置と育成は重要な戦略課題となるでしょう。
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