エンジニア採用は、営業職や事務職などの一般職と比べて難易度が高いと言われます。その背景には、IT人材市場の慢性的な人手不足だけでなく、人事担当者が日々直面する具体的な悩みが隠れています。特にIT分野の知識が十分でない場合、「そもそも何から手をつければ良いのか分からない」という声も少なくありません。
本記事では、エンジニア採用を担当する人事が抱えやすい悩みを5つに整理し、それぞれに対する実務的な解決策を紹介します。今まさに採用活動で壁にぶつかっている方はもちろん、これからエンジニア採用を始める方にも役立つ内容です。
【目次】
エンジニア採用が無理ゲーな理由
エンジニア採用は、他職種の採用とは異なる独特の難しさがあります。市場の構造的な人材不足に加え、求めるスキルや経験が細分化しているため、条件に合う人材を見つけるのが難しくなっています。ここでは、その主な背景を3つのポイントに分けて整理します。
IT人材不足と売り手市場
経済産業省の「IT人材需給に関する調査(2024年)」によれば、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されています。特にWeb・アプリ開発やクラウド、AI領域など成長分野では需要が高く、優秀な人材ほど複数の企業からオファーを受けている状態です。
(出展: 経済産業省「IT人材需給に関する調査」2024年)
また、厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、エンジニアに該当する「情報処理・通信技術者」の有効求人倍率は、2022年4月の1.40倍から2025年4月には1.55倍まで上昇しています。
これは全職種平均の1.31倍を大きく上回る数字であり、エンジニア採用がいかに競争激化しているかがわかります。
年月 | 全職種平均 | エンジニア職 (情報処理・通信技術者) |
---|---|---|
2022年4月 | 1.23倍 | 1.40倍 |
2023年4月 | 1.29倍 | 1.50倍 |
2024年4月 | 1.31倍 | 1.52倍 |
2025年4月 | 1.31倍 | 1.55倍 |
スキルの多様化と細分化
一口に「エンジニア」といっても、フロントエンド、バックエンド、インフラ、機械学習、データサイエンスなど専門領域はさまざまです。
例えば「Java経験者」といっても、Spring Bootを使ったWebアプリ開発経験者と、レガシー環境での保守運用経験者ではスキルセットが全く異なります。AWS経験者でも、構築から運用まで一貫して対応できる人はごく一部です。
さらに、言語やフレームワーク、クラウドサービスなどの組み合わせも多様化しており、自社が求める条件に合致する人材はごく一部に限られます。
採用スピードと採用ブランディングの重要性
優秀なエンジニアは転職活動を始めてから数週間以内に内定を得ることも珍しくありません。実際、「一次面接の調整をしている間に他社で内定が出てしまった」という事例は、優秀なIT人材を今すぐにでも採用したい人にとってはなるべく避けたいケースです。
さらに、選考スピードが遅い企業は、それだけで候補者の熱量が下がります。加えて、面接や求人票で企業の魅力が十分に伝わらなければ、「他社のほうが良さそう」という印象を持たれてしまいます。
そのため、エンジニア採用ではスピード感のある意思決定と、「この会社で働きたい」と思わせる採用ブランディングが不可欠です。
採用ブランディングの具体例
人事が直面する壁①「求める人材が見つからない」
エンジニア採用で最初に直面する課題が、そもそも条件に合う候補者が見つからないという問題です。市場に出回る人材の数が少ないうえ、求めるスキルや経験が細かく限定されることで、母集団形成が難しくなります。
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人事が直面する壁②「スキルの見極めが難しい」
候補者の職務経歴書には「Java経験あり」「AWS運用経験あり」などと書かれていても、そのスキルがどのレベルなのかは判断が難しいものです。特にIT知識が少ない人事担当者にとって、経験年数だけでは実務力を正確に把握できません。
人事が直面する壁③「選考が長引き、優秀な人材を逃してしまう」
優秀な人材ほど転職市場での動きが早く、数週間で内定が決まるケースも珍しくありません。一方で、自社の選考が長引くと候補者の意欲が下がり、他社に先を越されてしまいます。
人事が直面する壁④「内定辞退が多い」
せっかく内定を出しても、候補者が他社を選んでしまうケースは少なくありません。特にエンジニアの場合、複数社から同時にオファーを受けることが多く、条件や企業の魅力が比較されます。
人事が直面する壁⑤「入社後の研修や定着がうまくいかない」
採用活動が成功しても、入社後に十分な研修やフォローが行われなければ、早期離職やモチベーション低下につながります。特にエンジニアは業務で使用する技術やツールが会社ごとに異なるため、スムーズな立ち上がりには準備が欠かせません。
外部パートナー活用による課題解決
エンジニア採用の悩みは、自社だけで解決しようとすると時間もコストもかかります。特に即戦力の確保や育成リソースの不足といった課題は、外部パートナーの活用によって大きく改善できます。
当社の調査では、ITエンジニアの割合のうち、約4割が外部人材というデータもあるほど、現在は外部パートナーを活用することで開発リソースを補う企業が増えています。
まとめ
エンジニア採用は難易度が高い分、悩みも多岐にわたります。しかし、それぞれの課題には実務的な解決策が存在します。本記事で紹介した5つの悩みと対策を押さえることで、採用成功の確率は大きく向上します。
また、人事担当者が一人で全てを解決しようとするのではなく、現場や外部パートナーと連携しながら進めることが、長期的な採用活動の安定にもつながります。
例:Java経験5年以上+AWS設計経験あり+リーダー経験必須
1つの媒体だけでは、求める層に求人情報が行き届かず、応募機会を逃してしまいます。
例:転職サイト1社だけに掲載し、SNSやスカウトは未実施
市場全体でエンジニア人材が不足しており、そもそもの候補者数が限られています。