近年、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に伴い、「開発の内製化」と「外注人材の戦略的活用」をどう両立するかが企業の競争力を左右しています。かつて外部ベンダーに委託していた開発業務を、社内エンジニア主導に切り替える動きが加速しており、その背景には「スピード対応」「柔軟性」「独自性」などの要請があります。
実際、情報処理推進機構(IPA)が実施した「2023年度ソフトウェア開発に関するアンケート調査」によれば、ユーザー企業のうち実に86%がソフトウェア開発の内製化を実施または検討していると回答しています。これは、内製開発がもはや一部の先進企業だけの取り組みではなく、業界全体に広がっていることを示しています。
本記事では、なぜ今「内製化」が注目されているのかを紐解きながら、そのメリット・デメリットや体制構築のポイントを解説します。また、慢性的なエンジニア人材の不足が続くなかで内製化を進めるには、外部人材の力をうまく取り入れた“ハイブリッド型”の進め方もひとつの有効な選択肢であることにも触れていきます。
【目次】
なぜ今「内製化」が求められているのか
内製化へのニーズが高まっている背景には、以下のようなDX時代ならではの課題があります。
- ビジネススピードへの対応:市場変化が激しい中で、要件変更に柔軟に対応できる社内開発体制が求められている。
- ベンダー依存からの脱却:特定のベンダーに依存し続けることで発生するコスト・品質・知見の限界を回避。
- サービスの独自性・差別化:社内エンジニアがプロダクト理解を深め、独自の価値提供が可能に。
とくにスタートアップや新規事業開発を担う現場では、スピード感ある意思決定と開発が成果に直結するため、内製化のメリットが顕著に表れています。
内製化のメリット
企業が内製開発体制を構築することで、以下のような利点が得られます。
- 自社ノウハウの蓄積:仕様理解や業務知識が社内に残るため、長期的な資産となる。
- 意思決定の迅速化:社内メンバー間のコミュニケーションで開発スピードが向上。
- 仕様の柔軟な変更対応:開発途中での仕様変更にも即座に対応可能。
- エンジニアのプロダクト愛着:当事者意識を持って開発に関われるため、品質やUXへのこだわりが生まれる。
このように、内製化は単なる「コスト削減」ではなく、事業成長のドライバーとしての側面が強調されつつあります。
エンジニア組織内製化のデメリット
一方で、すべてを内製化しようとすると、以下のような課題に直面します。
- エンジニア採用の難しさ:優秀な人材の獲得競争が激化しており、採用が長期化・高コスト化。
- 育成コストの高さ:内製チームの立ち上げには、教育やフォロー体制の整備が不可欠。
- リソースのボトルネック化:すべてを内製で抱え込むと、繁忙期や障害対応に耐えきれなくなる。
- 属人化リスク:少数精鋭での運用が続くと、担当者依存が高まり、離職時に影響が大きい。
内製化の推進=内製化のみに固執するのではなく、外部リソースとどう組み合わせるかが持続的な組織成長のカギとなります。
人材のオンボーディングにかかる負荷と外注の即戦力性
新たにエンジニアを社内に迎えた場合、オンボーディングや育成に時間と工数がかかることもあります。社内システムの理解、業務フローの習得、コード規約の把握など、ひと通りの習熟に1〜2ヶ月以上要することも珍しくありません。
一方で、外注エンジニアは即戦力としてプロジェクトに参加できるケースが多く、短期間での立ち上がりが期待できます。特に派遣・業務委託で提供されるエンジニアは、事前にスキルチェックがされており、現場での即応力に優れています。
育成に時間をかけられない、あるいはプロジェクトのスピードが優先されるフェーズにおいては、外注の活用が非常に有効な選択肢となります。
エンジニア「外注」のメリットと種類
コストだけじゃないエンジニアの「外注」のメリット
外注と聞くと「高コスト」という印象を持たれることがありますが、実際にはコスト以外のメリットも多く存在します。
- 品質の安定:複数プロジェクトを経験している外注エンジニアは、業務効率や品質管理に長けています。
- チーム力の強化:社内チームと外注チームが補完し合うことで、開発スピードやレビュー体制が強化されます。
- 柔軟なスケーリング:開発ボリュームの増減に応じて、必要な期間・人数だけアサインできる柔軟性が魅力です。
単なる人手不足の穴埋めではなく、戦略的な外注活用こそが、DX推進における大きな武器となります。
正社員型派遣や紹介予定派遣、SESなどの「外注」の種類
内製化の推進が進む一方で、全ての人材を社内でまかなうのは現実的に難しいケースも少なくありません。特にQA体制の構築やテスト自動化など、専門性の高い領域では、外部のプロフェッショナル人材を柔軟に登用することが、内製化を成功させるためのカギとなります。
外部人材の活用にはさまざまな手段があり、それぞれ契約形態や目的に応じた特徴があります。以下に代表的な6つの手段と、その違いを比較した表をまとめました。
- 正社員型派遣(常用型派遣):派遣会社に正社員として雇用されたエンジニアが、クライアント企業に常駐して業務を行う
- 紹介予定派遣:一定期間の派遣期間終了後、双方の合意があれば正社員として直接雇用できる仕組み
- 登録型派遣(一般派遣):プロジェクト単位や短期間の業務に対応するために、一時的に派遣されるスタイル
- SES(準委任契約):エンジニアが業務遂行に従事する準委任契約。成果ではなく作業時間に応じた契約形態
- チーム派遣:あらかじめ役割分担が決まった複数名のエンジニアチームを、まとまりのある単位で派遣する仕組み
- フリーランス:個人で活動するエンジニアに業務委託する形式。柔軟でコスト効率も高いがマネジメントは必要
契約形態 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
正社員型派遣 | 派遣元の正社員が常駐 | 安定したスキル供給、定着しやすい | コストは比較的高め |
紹介予定派遣 | 派遣後に正社員化を前提 | ミスマッチ防止、採用リスク軽減 | 採用に至らない場合のロスあり |
登録型派遣 | 期間限定の派遣契約 | 短期即戦力の確保が可能 | ノウハウが社内に蓄積されにくい |
SES | 準委任による常駐支援 | 柔軟なリソース調整が可能 | 成果責任が曖昧になりやすい |
チーム派遣 | プロジェクト単位の外部チーム導入 | 複数名のエンジニアをチーム単位で派遣可能 | 単価は個別派遣より高め |
フリーランス | 個人事業主と直接契約 | 専門性とコストのバランスが良い | 稼働・品質にバラつきが出やすい |
このように、内製化と外部人材活用は対立するものではなく、むしろ補完し合う関係です。プロジェクトの性質や自社の状況に応じて、最適な人材の形を選択することが、安定した開発と高品質なアウトプットにつながります。
エンジニアの正社員型派遣についてはこちらの記事をチェック!
Webエンジニア正社員型派遣の参画事例
ここでは、ラクスパートナーズのエンジニアの参画事例を一部ご紹介します。
派遣先企業
モビリティサービス運営企業(大規模な製品ラインナップを展開するWebサービスを開発・運用)
背景・課題
複数プロジェクトが並行進行する中でエンジニアのリソースが不足。
期日厳守が求められる状況下で、自律的に動けるVue.js対応エンジニアの確保が急務だった。特に、スケジュール管理・関係各所との円滑なコミュニケーションを自発的に行える人材が必要とされていた。
対応内容:
- フロントエンドエンジニアとして参画し、トップページや製品紹介コンテンツなどの設計・開発を担当。
- デザインやコーディングルールの複雑さを踏まえ、Vue+NuxtからReact+Next.jsへのマイグレーションを主導。
- 多様な製品を扱う大規模サイトにおいて、期日厳守かつ安定的に開発・運用を推進。
成果:
- 事前すり合わせのルール化・フォーマット化により、手戻りの削減と工数短縮を実現
- 業務の属人化を解消し、新規参画者にとっての理解促進と開発スピード向上に貢献
- 過去からの慣習を見直し、チーム内のハレーションなく業務改善を実施
- 当事者意識を持ってタスクを積極的に吸い上げ、プロジェクト進行の円滑化と開発効率の向上に寄与
インフラエンジニア正社員型派遣の参画事例
派遣先企業
大手SIer企業(大規模な社内基幹システムの刷新およびクラウド移行プロジェクトを推進)
背景・課題
50以上の業務アプリケーションが連携する基幹システムにおいて、オンプレミス環境のサーバー保守切れやOS・ミドルウェアのEOS/EOLが迫っていた。刷新および社内クラウド化プロジェクトが並行して進む中、対応可能なエンジニアのリソースが不足していた。
対応内容
- 当初は構築メンバーとして参画し、その後、運用業務も兼任
- 1年未満〜20年以上の幅広い経験層で構成される10名規模のエンジニアチームにおいてリーダーを担当
- 要件定義〜保守運用までを一人称で遂行しつつ、Ansibleによる構築の自動化を推進
- 社内クラウドおよびMicrosoft Azure環境への移行を実施
成果
- ナレッジ共有を通じて手戻りを削減し、WBSの粒度向上と課題の早期発見を実現
- インフラ構築〜運用までの全工程を俯瞰的に把握し、若手からベテランまでの相談役として機能
- 特にメンバー育成に注力し、チーム全体のパフォーマンスの向上
- プロジェクトの理解促進と体制強化により、長期的なシステム安定化と効率化に貢献
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まとめ
内製化は、DX時代の競争力を高めるために不可欠な戦略です。しかし、すべてを社内で完結させようとするには、多くのリソースと時間が必要となり、現場の負担や属人化リスクも高まります。
だからこそ、「本当に内製化すべき領域」と「外部に頼るべき領域」を見極めたうえで、柔軟に外注人材を活用することが、現実的かつ持続可能な選択です。
当社では、即戦力となるエンジニア人材を正社員型派遣や業務委託という形でご提供しています。内製化を推進しながら、足りない部分は信頼できるパートナーと補完し合うことで、より強い開発体制を実現できます。
「まずは一部だけ任せてみたい」「中長期的に人材不足を補いたい」といったご相談でも大歓迎です。貴社のDX推進を加速させる第一歩として、ぜひ当社のエンジニア外注サービスをご活用ください。
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