失敗しないQA組織の立ち上げ方とは?今こそ見直すべき品質保証の基本と実践

失敗しないQA組織の立ち上げ方とは?

開発スピードが加速し、リリース頻度が高まるなかで、ユーザーに安定した体験を届けるために欠かせないのが「QA(品質保証)」の体制です。従来の開発メンバーによるテスト対応では限界がある中、専任のQA組織を立ち上げる企業が急増しています。

しかし、実際にQA体制を整備しようとすると、「どんなスキルの人材を採用すべきか」「誰がリードすべきか」「どのフェーズから関わるべきか」といった悩みを抱える採用担当者・開発責任者も少なくありません。

本記事では、まず「QAエンジニアとは何か?」を明確にした上で、QA組織が求められる背景、立ち上げ時に検討すべきポイント、チームづくりの進め方をわかりやすく解説します。

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QAエンジニアとは?──テスト担当者ではなく「品質の専門家」

QAエンジニア(Quality Assurance Engineer)は、単なる「テスター」ではありません。ソフトウェアの品質を計画的・構造的に担保するための戦略立案、テスト設計、工程の最適化、プロセス改善などを専門とする職種です。

その役割は多岐にわたり、たとえば次のような業務を担当します。

  • 品質基準の定義とテスト戦略の策定
  • テスト設計(単体・結合・E2E)とレビュー
  • 自動テストの導入とCI/CDとの統合
  • 不具合の傾向分析と改善提案
  • 品質KPI(例:バグ件数、テストカバレッジなど)の可視化

「不具合を見つける」だけでなく「不具合を生まない開発プロセスをつくるのがQAエンジニアの本質です。だからこそ、開発後半ではなく、要件定義や設計段階からプロジェクトに関与できる体制が理想とされます。

なぜ今、QA組織の立ち上げが注目されているのか?

昨今のプロダクト開発では、次のような変化が進んでいます。

  • リリースサイクルの高速化(週次・日次単位)
  • アジャイルやスクラムの普及
  • リモート環境での分業・属人化リスクの増加

こうした背景により、「開発チームがついでにテストする」体制では、バグの取りこぼしや品質劣化が発生しやすくなります。早い段階から品質を作り込む体制──つまりQA組織の立ち上げが必要不可欠となっているのです。

QA組織の立ち上げステップ

QA体制は一気に完成させるのではなく、段階的に構築していくのが現実的です。以下に代表的なステップを具体的に解説します。

1. 現状課題の洗い出し

まず行うべきは、現行の開発フローにおける品質課題の見える化です。例えば、以下のような情報を収集・整理します。

  • 過去1年間で発生した不具合の件数・傾向・原因
  • リリース後に発見されたバグの割合
  • テスト実施にかかっている時間と人的コスト
  • 設計ミスや仕様漏れの発生頻度

この分析により、QAが注力すべき対象(要件定義工程の見直し、UIテストの強化など)が明確になり、組織設計やKPI設定にも役立ちます。

2. ミッションと役割の定義

次に、QA組織の目的と役割を明確にします。「品質を担保する」といっても、その手段は企業によって異なります。以下のような視点で設計しましょう。

  • 単なるテスト実施部隊ではなく、開発プロセス全体に関与するのか
  • テスト設計・実行だけでなく、自動化や改善提案も担うのか
  • プロダクトマネージャーや開発リーダーとの関係性をどう構築するか

ミッションとスコープを明確にすることで、採用要件や育成方針にも一貫性が生まれます。

3. 人材の採用と配置

QA組織に求められるスキルは幅広く、単に「テストができる」人材だけでは不十分です。以下のような能力を持つ人材が理想的です。

  • 網羅的なテスト設計(例:BVA、状態遷移テスト)の実務経験
  • テスト自動化(Selenium、Playwrightなど)の導入経験
  • CI/CDや品質指標の理解、定量的な品質改善の経験

また、チーム初期は「QAリーダー」クラスの人材の配置も有効です。内製での採用が難しい場合は、QA経験者の正社員型派遣や外部チームとの協働も選択肢に入ります。

4. プロセス整備と自動化導入

属人化を防ぎ、効率的な品質保証を行うにはプロセスの定型化と自動化が不可欠です。たとえば次のような仕組みづくりが推奨されます。

  • テスト観点表や仕様レビューのテンプレート化
  • テストケース管理ツール(TestRail、qTestなど)の導入
  • UIテストの自動化(Selenium、Cypressなど)とCIへの組み込み
  • 障害票の分類・分析ルール策定

「すべて自動化する」ことを目的とせず、人的負荷を減らし、品質の可視化を進めることを重視しましょう。

5. 継続的な改善と評価

組織が一度立ち上がっても、定期的な振り返りと改善がなければ形骸化します。次のような評価指標をもとに、運用の質を定期チェックしましょう。

  • リリース後の不具合件数と原因分析(要件漏れ/設計ミス/実装バグなど)
  • QA起点でのプロセス改善提案数
  • 自動化比率(カバレッジ)とメンテナンス効率

KPIは「減らす」「短くする」だけでなく、「早く発見する」「事前に防ぐ」ことに着目して設計するのがポイントです。

QAが開発の最終工程ではなく、「品質を最初から作り込むパートナー」として機能する状態を目指しましょう。

ラクスパートナーズによるQA組織立ち上げ事例はこちら
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採用担当者が押さえておきたいポイント

QAエンジニアやQAリーダーの採用では、単に「テスト経験があるかどうか」ではなく、品質改善に主体的に関われるかどうかを見極める必要があります。

  • テスト自動化やCI/CD環境の導入経験
  • ドメイン知識(自社業界への理解)
  • 品質向上施策を提案・実行した経験

加えて、開発チームと対話できるコミュニケーション力や、妥協せずに品質を守る意識も評価すべきポイントです。

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QA体制がないことで起こる具体的な失敗例

QA体制が不十分なまま開発を進めた場合、次のような問題が現場で頻発します。

1. リリース直後の不具合多発と炎上

「なんとか間に合った」とリリースした直後に、ユーザーからのバグ報告が殺到。SNSでの拡散や低評価レビューが続出し、ブランド毀損や顧客離れを招くケースは少なくありません。開発チームは緊急対応に追われ、本来注力すべき改善や新機能開発が止まってしまう事態も起こります。

2. 属人化による品質の崩壊

「◯◯さんがチェックしてくれてるから大丈夫」──そんな属人的な品質管理体制では、担当者の異動や退職で一気にノウハウが失われ、同じようなバグが繰り返されます。仕様書やテスト設計が整備されておらず、オンボーディングにも時間がかかるなど、組織全体の生産性にも影響が出ます。

3. 技術的負債の蓄積

テスト工程が後回しになったり、設計と検証が分断されていると、気づかぬうちにバグの温床が積み重なります。これらは後から回収しようとしても莫大な工数が必要になり、結果として機能追加のスピードを妨げる“負債”としてのしかかってきます。

このような問題は、品質の問題だけでなく組織の信頼性、顧客満足度、プロダクト成長の持続性をも脅かす深刻なリスクです。だからこそ、QA体制は「コスト」ではなく「投資」として捉えるべきなのです。

QAエンジニアの重要性ついてはこちらの記事をチェック!

なぜ今QAエンジニアが重要なのか?高品質な開発体制を支える鍵とは

QAエンジニアの採用は難しい?外部登用という選択肢

昨今、QAエンジニアはSaaS系やWebサービス系の企業を中心に採用競争が激化しており、テスト自動化や品質戦略に長けた即戦力人材はなかなか市場に出てきません。

特にスタートアップや中堅企業では、限られたリソースの中でQA専門人材を育成する余裕がなく、開発チームが品質を兼務せざるを得ない状況も見られます。

そこで注目されているのが、外部QAの活用です。具体的には以下のような手段があります。

  • QA経験者の正社員型派遣:社内メンバーと同様の環境でプロジェクトに関与
  • QAチームの一括常駐:立ち上げフェーズからプロセス設計・実行までを支援
  • QAコンサルティング:短期的にアセスメント・体制設計を委託

これらの外部リソースを戦略的に取り入れることで、「スピードは必要だが、品質も落とせない」というジレンマを解消しながら、QA組織の立ち上げをスムーズに進めることができます。

QAエンジニアの参画事例①

ここでは、ラクスパートナーズQAエンジニアの参画事例を一部ご紹介します。

派遣先企業

EC向けSaaS開発企業

背景・課題

事業拡大に伴う高難度のエンタープライズ向けカスタマイズ案件などが発生しており、効率的にテスト業務を行っていく必要があった。そのために、QAチームを強化する必要があり即戦力のエンジニアを求めていた。

対応内容

  • プロダクトオーナー1名・開発エンジニア2名・QAエンジニア1名のチームに参画
  • 参画8カ月で、それまでプロパーの方が担っていたスクラムマスターのポジションを任され、複雑な決済周りの仕様を把握し、テスト業務を運用
  • 生産性効率化プロジェクトにも参画し、チケット管理方法の提案などを実行

成果

  • 自ら積極的にプロジェクトに参加し、チームの生産性向上に貢献
  • スクラムマスターとしてチームマネジメントを担当
  • テスト自動化を実施し、高難度案件の品質を支援

QAエンジニアの参画事例②

派遣先企業

SNS連動のEコマース開発企業

背景・課題

  • テスト専任者が不在の状態で、開発者が個々にテストを実施していたため、品質にばらつきがあり、バグの多発も課題に。戦略的に品質保証を強化する必要があった。

対応内容

  • 開発チームおよび横断的なQAチームに参画し、複数プロジェクトのテスト管理・品質保証を統括
  • テスト設計・実施に加え、自動化(E2Eテスト)を推進し、作業効率を改善
  • 不具合をダッシュボードで可視化し、改善サイクルをチーム全体で共有

成果

  • 多数の不具合を検出し、テスト体制の構築・最適化をリード
  • テスト管理ツール導入により業務効率を大幅に向上
  • バグ傾向や仕様の整備を通じて品質・生産性向上に貢献

他エンジニアの参考事例はこちら

まとめ:QA組織の立ち上げは、事業の成長に欠かせない投資

テストは後工程の「確認作業」ではなく、プロダクト品質を左右する「戦略領域」になっています。プロダクトのリリース後にユーザーからの不具合報告が相次ぐ前に、“開発と同じ重みで品質をつくる”ためのQA組織を立ち上げることが、持続的な開発体制づくりの第一歩です。

採用担当者としても、単なるテスト担当者ではなく、プロダクトを守る「品質のプロフェッショナル」を採用・育成できる視点が求められています。

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