近年、AI技術の急速な発展とともに注目を集めている「機械学習」。企業のDX推進においても、業務の自動化やデータ活用の高度化を実現する手段として、その導入を検討する企業が増えています。しかし、「機械学習」とは具体的にどのような技術なのか、どのようにビジネスへ応用できるのかが明確でないまま、活用に踏み切れない企業も少なくありません。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が発行した『DX白書2023』によれば、日本企業のうち、AI(機械学習を含む)をすでに導入している企業は約14%にとどまっています。しかし、「導入を予定している」または「現在検討中」と回答した企業を含めると、実に40%以上の企業がAI導入に関心を持っていることが明らかになりました。
とくに大企業を中心にAI技術への関心が高まっており、今後はデータ活用や業務自動化といった分野で機械学習の導入がさらに進むことが予想されます。
本記事では、機械学習の基本的な仕組みと、企業が導入を検討する際のステップ、活用事例、さらにエンジニア不足に悩む企業向けに外注という選択肢についてもご紹介します。
【目次】
機械学習とは?
機械学習(Machine Learning)とは、コンピューターに大量のデータを与え、そこからパターンやルールを学習させることで、明示的なプログラミングなしに判断や予測を行えるようにする技術です。AI(人工知能)の一分野に位置づけられ、特にビジネスにおける予測・分類・異常検知といった分野で活用が進んでいます。
例えば、ユーザーの購買履歴からおすすめ商品を表示したり、過去の売上データから将来の需要を予測したりといった用途が代表例です。
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機械学習の主な手法と活用例
機械学習の主な手法
機械学習は、大きく以下の3つの手法に分類されます。
- 教師あり学習:正解ラベル付きのデータを使って学習し、新たなデータに対して予測や分類を行う(例:売上予測、顧客の離反予測)。
- 教師なし学習:正解ラベルのないデータから、共通点やパターンを見つけ出す(例:顧客のセグメント分析)。
- 強化学習:試行錯誤を通じて最適な行動を学習する(例:自動運転、ゲームAIなど)。
企業で最も多く使われているのは「教師あり学習」であり、ビジネス課題に対して明確な目的変数が設定されるケースに適しています。
企業における活用例
機械学習は業種を問わず、さまざまな領域でビジネス価値を発揮しています。以下はその代表的な事例です。
- 小売業:需要予測、在庫最適化、パーソナライズドマーケティング
- 製造業:設備故障予測、品質検査の自動化、不良品検知
- 金融業:不正検知、信用スコアリング、リスク予測
- 人事・採用:候補者のスクリーニング、離職予測、最適配置分析
自社で保有する業務データを活用すれば、より高精度かつ自社に最適化されたモデルの構築が可能となります。
導入ステップと注意点
企業が機械学習を導入する際には、以下のステップを踏むことが一般的です。
- 課題の明確化:何を予測・分析したいのかを明確にし、ビジネスインパクトを検討
- データの準備:対象となるデータを収集・整備し、前処理を実施
- モデル選定と学習:適切なアルゴリズムを選び、トレーニングデータで学習
- 精度検証:テストデータで評価し、再学習・チューニングを実施
- 本番導入と運用:現場業務に組み込み、定期的な保守・改善を行う
このプロセスには、機械学習に関する専門知識に加え、データ整備や業務理解が不可欠です。また、モデルのブラックボックス性により、意思決定に活用する際には説明可能性(XAI)の観点も考慮すべきでしょう。
導入時に多い課題とその解決策、成果測定
多くの企業で見られる機械学習導入の課題には、以下のようなものがあります。
- 目的が曖昧:データ分析の目的が曖昧で、成果指標(KPI)が設定されていない
- データ不足・データの質の問題:分析に必要なデータが不足していたり、欠損や偏りがある
- 現場との乖離:分析部門と業務部門の連携が取れておらず、実運用に落とし込めない
これらの課題に対しては、以下のような対策が有効です。
- 初期段階でビジネス部門と連携し、目的とKPIを明確化する
- 必要なデータの棚卸と整備、データ収集プロセスの見直しを行う
- PoC(概念実証)からスタートし、スモールスタートで現場に導入しやすい形で展開する
導入後の成果測定とROIの考え方
機械学習プロジェクトのROI(投資対効果)を正しく測ることは、次のプロジェクトや社内説得の成功にも直結します。成果測定には以下の観点が重要です。
- 業務効率化の度合い:処理時間の削減、人件費削減、対応件数の増加など
- 精度向上:予測精度・分類精度の向上による施策実行率やCV率の改善
- 意思決定の迅速化:レポート作成の自動化、リアルタイム分析の実現
ROIを定量的に測るためには、「導入前後でのKPI比較」や「年間削減コスト・増収額」といった指標を用いると効果的です。また、分析結果が長期的にどのような意思決定に貢献したかといった質的評価も併せて行うと、経営層の納得感が高まります。
内製か外注か?エンジニアリソースの課題
多くの企業が機械学習導入にあたって直面するのが、専門エンジニアの人材確保です。機械学習エンジニアは、データサイエンスだけでなく、MLOps、API開発、クラウドインフラ等にも精通している必要があり、採用の難易度が高い職種です。
さらに、モデル精度の改善や運用の最適化は一度きりではなく継続的に必要とされるため、プロジェクト単位で成果を出せる体制構築が重要です。
機械学習エンジニアを外注するという選択肢
こうした背景から、近年注目されているのが「機械学習エンジニアの外注(派遣・業務委託)」です。特に以下のような企業には外注のメリットが大きいと言えます。
- 短期間で成果を求めている企業:すぐにプロジェクトを立ち上げられる即戦力が必要
- 採用リスクを避けたい企業:人材のマッチングや評価に不安がある
- 社内にノウハウがない企業:外部のプロに伴走してもらいながら社内理解を促進したい
データ活用プロジェクトは、「立ち上げの遅さ」が成果を大きく左右します。外注であれば、要件定義〜実装までのフェーズを数ヶ月単位で一気に推進可能です。社内で採用から教育までを行うよりも、圧倒的に短いスパンで成果を創出できます。
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機械学習エンジニアの参画事例
ここでは、ラクスパートナーズの機械学習エンジニアの参画事例を一部ご紹介します。
派遣先企業
医療AI企業
背景・課題
医療データ解析プロジェクトが進行中だったが、少数データ・クラス不均衡など医療データ特有の課題に対応できるAIエンジニアが不足し、研究開発の進行が停滞していた。
対応内容:
- CT画像と超音波画像の統合解析に対応するマルチモーダルモデルを構築
- クラスのアンバランス対策(アップサンプリング・重み付き損失関数)を実施
- Python/PyTorch/SegFormerなどを活用し、モデルの精度を大幅に向上
成果:
- 予定よりも早く研究成果を創出し、次フェーズへの移行が実現
- 医療AIモデルの実装とデータ処理改善により、プロジェクト進行が大幅に加速
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まとめ
機械学習は、今後のビジネスにおける差別化と競争力向上に欠かせない技術です。しかし、導入には専門的な知識と技術が求められ、社内だけで完結するのは難しいケースも多く存在します。
そんなときこそ、外部の機械学習エンジニアを活用することで、よりスムーズかつ成果につながるプロジェクト推進が可能となります。DXを本格的に進めたいとお考えの企業様は、ぜひ一度当社までご相談ください。
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