経済産業省が発表した「DXレポート2(2020年版)」によると、日本企業の約95%がDX未着手または途上と回答しており、多くの企業がデジタル変革の途中で立ち止まっている現状が浮き彫りになっています。
実際、独立行政法人IPAが発表した「DX動向2024調査」でも、企業の約7割が「社内にDXを推進できる人材が不足している」と回答しており、特にデータサイエンティストのような高度専門人材の確保が喫緊の課題となっています。
中でも、分析・予測・最適化などを担う「データサイエンティスト」の存在は、DX成功において不可欠です。しかし、専門人材の採用は競争が激しく、育成にも時間とコストがかかるため、PoC(概念実証)から実装・運用への移行が進まないという課題が多くの企業で見受けられます。
こうした背景を受け、近年注目されているのが「データサイエンティスト外注」という選択肢です。
「外注」と聞くと、開発や保守の丸投げを想起されるかもしれませんが、DX領域における外注は、プロジェクトに並走する“伴走型の専門人材活用”へと進化しています。本記事では、この外注スタイルの実態と、導入のメリットについて詳しく解説します。
【目次】
データサイエンティストとは?
データサイエンティストとは、膨大なデータを活用してビジネス上の課題を明らかにし、予測・分類・最適化などの技術を駆使して意思決定を支援するAIエンジニアの一種です。
統計解析、機械学習、データベース、プログラミング、可視化など幅広いスキルを備えており、単なる分析にとどまらず、業務への実装・改善提案までを担います。企業のDXを本質的に推進する上で、極めて重要な役割を果たす存在です。
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DXを止める「3つの罠」とその構造
DXを推進する企業が直面する課題の多くは、表面的なテクノロジー導入では解決しきれない、構造的な問題に起因しています。ここでは、DXが頓挫する3つの典型的な罠について掘り下げてみましょう。
罠1:PoC止まりのプロジェクト
多くの企業が、まずはPoCとしてデータ活用を試みます。しかし、仮説検証やモデル構築の段階で頓挫するケースが少なくありません。
- ビジネス課題に即した分析になっていない
- 機械学習モデルが作れても実装・運用に至らない
- 成果を評価・展開する仕組みがない
PoCが“目的化”してしまい、事業改善にまで結びつかないケースも多く見られます。
罠2:ツール導入=DXと誤認
「BIツールやAIツールを導入するだけで満足してしまい、実際には誰も活用していない。
こうした「形式的なDX」も少なくありません。ツールはあくまで手段であり、「使いこなす人材」がいてこそ意味を成します。
特に、運用や意思決定にツールを活用できる“橋渡し役”が不在だと、宝の持ち腐れになりかねません。
罠3:“丸投げ外注”の限界
社内に人材がいないからといって、データ活用を完全に外部委託するケースもあります。しかし、アウトプットだけを受け取るスタイルでは、社内にノウハウが残らず、DXの持続性が確保できません。
一見効率的に見えるこのやり方は、中長期的には社内に何も残らないリスクを伴います。
注目される「データサイエンティスト外注」という選択肢
多くの企業がDX推進に取り組む中、「データ活用のスピードを上げたい」「実務に強いプロ人材をすぐにでも投入したい」といったニーズが高まっています。こうしたニーズに応える手段として、近年注目を集めているのが「データサイエンティストの外注」という選択肢です。
ただし、ここで言う「外注」は、かつてのような“丸投げ型”とは異なります。データ活用の領域では、成果物だけを受け取る旧来型の業務委託では、社内にノウハウが蓄積されず、長期的には不利になるリスクがあります。
“伴走型支援”としての外注活用
このスタイルの外注は、以下のような課題を解決します。
- 分析から実装・運用まで、一気通貫で推進したい
- 社内に専門人材をフルタイムで抱えるリスクを抑えたい
- 早期にPoCを形にして、意思決定に活かしたい
外注だからこそ得られるメリットとは?
内製・外注それぞれのメリット・デメリット
ここで、データサイエンティストの活用にあたっての「内製」と「外注」の違いについて整理してみましょう。
項目 | 内製 | 外注 |
---|---|---|
人材の定着 | 長期視点で育成・ノウハウ蓄積が可能 | 期間・目的に応じて柔軟に活用可能 |
初期導入スピード | 採用・育成に時間がかかる | すぐにプロジェクトを始動できる |
コスト | 継続的な人件費負担あり | 必要なときに限定した予算で活用可能 |
専門性 | 育成次第で対応範囲が広がる | 特定分野に特化したスキルをすぐに投入可能 |
このように、内製化は長期的な戦略に向いている一方で、即戦力や短期間での成果を求める場合には外注のメリットが際立ちます。
外注だからこそ得られるメリットとは?
自社でデータサイエンティストを採用・育成するには、時間もコストもかかり、しかも市場における競争は激化する一方です。そうした中、外部のプロフェッショナルを活用することで、必要なタイミング・領域に、最適なスキルセットをスピーディに投入できるという外注の強みが際立ちます。
ここでは、外注だからこそ得られる3つの主要なメリットについて、具体的な事例も交えて紹介します。
メリット1:スピード
データ活用プロジェクトは、「立ち上げの遅さ」が成果を大きく左右します。外注であれば、要件定義〜実装までのフェーズを数ヶ月単位で一気に推進可能です。社内で採用から教育までを行うよりも、圧倒的に短いスパンで成果を創出できます。
【事例1】大手通信会社様(キャリア決済事業)
複雑な収益構造の可視化を目的に、データサイエンティストが短期間でPoCから実運用まで実施。ビジネスサイドが即座に意思決定に活用できる体制を整備し、PDCAの高速化を実現。【事例2】クレジットカード会社様
入会者数の伸び悩みに対し、入会予測モデルを短期間で構築・実装。効果的なターゲティング施策により、即月から新規入会者数が増加傾向へ。
メリット2:再現性
属人化しやすいデータ分析業務ですが、外注の場合はドキュメント整備やプロセス設計も契約に含まれることが多く、社内に知見を残す形式で進行します。再利用性の高いテンプレートやモデル構造の共有も得られ、次回以降のプロジェクトにも展開しやすくなります。
【事例3】ECサイト運営会社様
ユーザーの閲覧・購買行動を分析し、レコメンドエンジンを構築。モデル構造やデータ加工ロジックはテンプレート化され、他カテゴリへの横展開や自動チューニングの仕組みも整備。長期的な運用コスト削減と施策の再現性を実現。【事例4】物流会社様
過去の配送データを分析し、配送ルート最適化モデルを構築。交通パターンや時間帯の違いも加味したシミュレーションが自動化され、社内チームが複数地域での活用に成功。ルート設計業務の工数が大幅に削減された。
メリット3:内製化との両立
外注と聞くと「ノウハウが外に流出するのでは?」という懸念もありますが、伴走型の外注であれば、社内メンバーとの共創を通じて、知見を社内に蓄積できます。
【事例5】自動運転システム開発会社様
車載センサーから得られるデータをもとに、障害物認識アルゴリズムを開発。開発フェーズに社内エンジニアも伴走し、AIモデルの構築・評価方法を習得。プロジェクト後は内製でモデルのチューニング・改善ができる体制へと移行。【事例6】医療系システム開発会社様
細胞画像からの異常検知アルゴリズムを開発。ラベリングの方針や処理ロジックについて定期レビューを実施しながら、社内の研究員と共同で進行。最終的には自社エンジニアが改良を行い、サービス化に成功。
このように、スピード・再現性・内製化という3つの観点から、外注は単なるリソース補填ではなく、「戦略的DX推進の加速装置」として機能します。
データサイエンス活用のステップ
データを効果的に活用し、DXを成功に導くためには、明確なステップ設計が欠かせません。単発の分析に終わらせず、継続的な価値創出につなげるための一般的なプロセスは、以下の通りでう。
- 目的の明確化:
何を改善したいのか、どのKPIに影響を与えたいのかといった、分析の目的とゴールを明確にします。 - データ収集・整備:
必要なデータを社内外から収集し、形式の統一や欠損値処理などの前処理を行います。 - 探索的データ分析(EDA):
データの傾向・分布・相関などを把握し、仮説立てや分析方針を設計します。 - モデル構築・検証:
機械学習や統計モデルを用いて予測・分類・クラスタリングなどを実施し、精度検証を行います。 - 施策立案・実行:
モデルの結果を基に、ビジネス部門と連携して施策を設計し、現場に展開します。 - フィードバックと改善:
実行結果を評価し、必要に応じて再学習・改善を行います。
このように、データ活用は「分析して終わり」ではなく、PDCAを回すような継続型の業務プロセスとして設計することが、真に価値を生むデータサイエンス活用のカギとなります。
このプロセスに精通した人材を社内で確保することは難しいため、外部の専門家と共にこのステップを回していくことが、実現可能なDX推進の第一歩となるのです。
当社がご提供する外注型データサイエンティスト
ラクスパートナーズでは、機械学習モデルの開発・分析基盤の構築・BIダッシュボードの設計など、多様なニーズに対応したデータサイエンティストの正社員型派遣および準委任契約(SES)サービスを展開しています。
お客様の課題や目標に応じて、最適な人材をご提案。初期フェーズの要件整理から、実装・検証、運用まで一貫した支援が可能です。
さらに、データ活用プロジェクトに現場で深く関与しながら、チーム内でのスキル共有や体制強化を行う「伴走型支援」のニーズも高まっており、当社ではこれに応じた人材提案・アサインも多数実績があります。
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データサイエンティストの参画事例
派遣先企業
大手通信会社
背景・課題
キャリア決済事業の収益構造が複雑で、事業管理に必要なデータの整理や資料作成に多大な負担がかかっており、PDCAをスムーズに回すために、膨大なデータを正しく活用できる数学的素養のあるデータサイエンティストを求めていた。
対応内容:
- 事業管理チームにデータサイエンティストが参画
- 数千万件の顧客データを分析・整理し、意思決定可能な形式へ整備
- 加盟店の料率マスターの構築や、滞納率の高いユーザー属性分析などを通じて事業課題を可視化
- データ処理・可視化・報告プロセスを「自動化(PRA導入)」し、業務効率を大幅改善
成果:
- 課題の早期把握と打ち手立案のスピード向上に貢献
- 事務作業の工数削減により、本質的な課題解決に向き合う時間を創出
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まとめ
DXを成功させるには、データを活用できる仕組みと人材の両方が必要です。その中で、データサイエンティストは不可欠な存在です。とはいえ、採用難やコストの課題から、内製化に踏み切れない企業も少なくありません。
そんなときこそ、外注という選択肢を検討する価値があります。柔軟かつスピーディにプロジェクトを推進し、確かな成果を得るための第一歩として、ぜひ当社の外注型データエンジニアサービスをご活用ください。
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