SES(システムエンジニアリングサービス)は、ITエンジニア不足が深刻化する中で、多くの企業が活用している開発体制の一つです。とくに自社開発を進めるIT企業にとっては、プロジェクトの成功可否を左右するほど重要なリソースとなります。
しかし、SESを導入する際に「価格の安さ」だけでパートナーを選んではいないでしょうか? 初期コストは抑えられても、品質が低ければトラブル対応に追われ、結果的に工数もコストも膨れ上がるケースは少なくありません。
本記事では、SES選定時に検討すべき「価格以上に重要な観点」について解説します。採用担当や開発マネージャーの方に向けて、信頼できるパートナー選びの考え方を具体的にお伝えします。
【目次】
SESとは
SES(システムエンジニアリングサービス)とは、主にエンジニアを業務単位・時間単位で提供する契約形態であり、準委任契約に基づいてクライアント企業のプロジェクトを支援する仕組みです。
業務の完成を目的とする請負契約とは異なり、成果物ではなく労働力の提供が主な目的です。開発・保守・運用などさまざまなフェーズで活用され、慢性的なエンジニア不足に悩むIT企業にとって重要な外部リソースとなっています。
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SES企業の特徴と種類
現在、国内には約3万社以上のSES企業が存在すると言われており、その規模や体制は千差万別です。数人規模の小規模事業者から、従業員数1,000人を超える大手SES企業まで幅広く存在しています。
その中から最適なパートナーを見極めるのは容易ではなく、「どのSES企業が信頼できるのか」「どう選べばよいのか」とお悩みの採用担当者の方も多いのではないでしょうか。企業規模によって、提供されるサービスの質や支援体制にも明確な“違い”があります。特に、「エンジニアの質を担保する仕組み」があるかどうかは重要なチェックポイントです。
- 定期的な技術研修を行っているか
- エンジニアのキャリアパスや成長支援に取り組んでいるか
- 配属後のメンタルケアやモチベーション管理が実施されているか
- 商流の浅さ(=エンドに近いかどうか)が確保されているか
こうした体制は、特に大手SES企業において整備されているケースが多く、安定した品質提供やエンジニアの定着率向上にもつながります。一方で、小規模SESではリソースやノウハウの制約から、十分な支援が難しい場合もあるため、企業選びの際には注意が必要です。
つまり、単なるリソース提供ではなく、中長期的なパートナーとして「信頼できる体制」があるかどうかを見極めることが、成功のカギとなります。
なぜ価格だけでは危険なのか?SES選定に潜むリスク
SES導入の際、「なるべくコストをかけずに採用したい」という思いから、価格を第一優先で判断してしまう企業も少なくありません。しかし、初期コストを抑えたつもりが、かえって想定以上の損失につながるケースも多く見受けられます。たとえば以下のようなリスクが存在します。
- ミスマッチによる立ち上がり遅延:スキルレベルが期待に達していないエンジニアがアサインされ、業務の理解に時間がかかる
- 指示待ち型人材による生産性低下:主体性がなく、細かな説明や管理が必要となり、社内メンバーの負担が増大
- 品質問題の増加:コード品質が低く、レビュー修正やテスト対応に時間を取られ、正社員がフォローに回る
- 早期離脱による再調整の発生:現場になじめず早期に契約解除、後任の調整・教育でさらなる時間的コストが発生
これらは一見見えにくい「隠れコスト」としてプロジェクトに影響を与え、結果的に当初の単価の安さ以上に高くつくこともあります。SES選定においては、目先の価格ではなく、現場にどれだけフィットし、成果を出せるかという視点が欠かせません。
価格の妥当性を見極めるために、まずは単価相場を把握する
SES企業を選定する際、「価格」は重要な判断基準の一つです。しかし、単に安価な企業を選ぶのではなく、適正な価格帯を把握した上で、「質」とのバランスを見極めることが非常に重要です。
実際、以下のような単価相場データが参考になります。ラクスパートナーズの調査によると、平均的な月額単価は以下の通りです。
- PG:50~80万円未満
- SE:60~90万円未満
- PL/PM:80万円以上
このような相場を基準にすることで、「安ければお得」「高ければ優秀」といった単純な判断を避けることができます。たとえば、相場よりも極端に安価な場合は、担当するエンジニアのスキルや経験に懸念がある可能性があります。一方で、相場を大きく上回る場合には、単価の内訳やスキルレベルとの整合性を必ず確認することが重要です。
質を見極める3つの視点
では、「質の高いSES」とは具体的にどのようなエンジニア、あるいはベンダーを指すのでしょうか。以下の3つの観点から、候補となるエンジニアの適性を多面的に評価することが重要です。
1. 技術スキルとプロジェクト経験
エンジニアのコーディングスキルやフレームワークの知識は基本ですが、それ以上に重視すべきなのが「自社プロジェクトとの親和性」です。
たとえば、以下の観点を確認しましょう。
- 使用している言語・フレームワーク・ツールが自社とどの程度一致しているか
- アジャイル、スクラム、ウォーターフォールなど開発体制への適応経験があるか
- 顧客業界(例:金融、EC、医療など)に関する業務知識を持っているか
加えて、同種のプロジェクトで成果を出した実績があるかどうかも、オンボーディングのスムーズさや期待できるパフォーマンスに直結します。
2. 自走力とコミュニケーション能力
技術力と同じくらい重要なのが「人間力」です。自社の開発現場にマッチするSES人材とは、「指示待ち」ではなく、自ら考え行動できるエンジニアです。
たとえば、以下のような力があるかを確認しましょう。
- 要件の背景や目的を理解し、仕様の矛盾やリスクを指摘できる
- 言われた通りに実装するだけでなく、よりよい方法を提案できる
- チャットやMTGでの報連相、フィードバックのやり取りがスムーズである
特にリモート開発や非同期のコミュニケーションが中心となる環境では、ドキュメントでの説明力やSlackなどでのレスポンスの質が成果に大きく影響します。
3. フォロー体制とサポートの質
実は、SESの「質」はベンダーの対応力にも大きく左右されます。どれほど優秀なエンジニアがアサインされても、バックアップ体制が不十分であれば継続的な成果につながりません。
具体的には、以下のポイントを事前に確認しておくと安心です。
- 稼働後のフォローアップは定期的に実施されるか(週次面談、レポートなど)
- 技術的なトラブルやチーム内の不整合が起きた際、どのような支援が受けられるか
- 担当営業だけでなく、テクニカルリードやサポート部門の存在があるか
ベンダーによっては、エンジニアを送り込んだら終わりというスタンスの企業も存在します。伴走型で支援してくれるパートナーかどうかは、稼働後の成果や離脱リスクにも直結します。
内製化とSESは両立できる
内製化の推進がトレンドとなる中で、「SESはあくまで外注だから、内製化の流れには逆行するのでは」と考える方もいます。しかし、実際にはそうとは限りません。優れたSESエンジニアは、社内メンバーと一体となって組織の中に溶け込むことで、内製化を支える存在になり得るのです。
特に立ち上げフェーズやリソース不足の時期には、外部人材の活用によって正社員が本来注力すべき業務に集中できる体制を作ることができます。また、ノウハウの移転や属人化リスクの分散といった点でも、SESの併用には大きな価値があります。
内製化=自社で全て賄う、という発想にとらわれすぎず、「内製組織を支えるパートナーとしてSESを戦略的に活用する」ことが、これからの開発組織には求められます。
まとめ:SES選定は「価格」でなく「成果」で判断を
SESを導入する際には、単価や条件だけでなく、その人材がどれだけ成果に貢献できるかという視点が欠かせません。採用難が続く今こそ、質の高い外部パートナーを見極め、社内リソースとの最適なバランスを構築することが重要です。
コストだけを重視するのではなく、「任せてよかった」と言える成果を生み出せるか。その観点でSES選定を見直すことが、プロジェクト成功の第一歩になるはずです。
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