「開発チームを強化したいが、正社員エンジニアがなかなか採用できない」――そんな声を多くのIT企業で聞くようになりました。慢性的な人材不足が続くなか、採用活動の長期化や採用ミスマッチに悩まされる企業も少なくありません。
一方で、業務は止められず、技術課題の解決も待ったなし。こうした状況下で注目されているのが、「外注」と「直接雇用」を目的に応じて使い分けるハイブリッド型の人材戦略です。
本記事では、即戦力エンジニアを確保するために知っておきたい「採用」と「外注」の違いやメリット・デメリット、そして現場の課題にあわせた最適な使い分けのポイントを解説します。
【目次】
なぜ今、エンジニアの直接採用はこれほど難しいのか?
ITエンジニアの採用市場は、年々その競争が激化しています。東京都のデータによると、2024年時点におけるIT関連職の有効求人倍率は3.17倍と、全職種平均の1.48倍を大きく上回る水準で推移しています[出典:東京都労働局]。
さらに、IT人材需給に関する調査では、2030年にはIT人材の不足数が最大で約79万人に達する可能性があるとされています。開発人材、とくに即戦力となる中堅層の獲得はますます困難になっており、企業は従来の「採用一本足」から脱却する必要に迫られています[出典:経済産業省]。
直接雇用(正社員)と外注(派遣・SES・フリーランス)の違い
直接雇用とは?
直接雇用とは、企業が自社の従業員としてエンジニアを採用し、直接雇用契約を結ぶ雇用形態です。採用した人材は企業の一員として組織に所属し、一定の期間以上にわたり業務に従事します。採用から労務管理までをすべて自社で行うため、カルチャーフィットや長期的な育成がしやすいという特徴があります。「正社員」について説明します。
正社員
正社員は、企業と無期の雇用契約を結び、長期的な雇用を前提とした働き方です。企業文化への適応や組織内でのキャリアパスが期待されますが、採用までに時間がかかることや、固定人件費が発生する点がデメリットとなります。
正社員と派遣の雇用時の違いについてはこちらの記事をチェック!
外注とは?
外注(外部人材活用)とは、企業が自社の雇用ではなく、外部の企業や個人にエンジニア業務を依頼する形態を指します。社内に人材を抱えずに必要なスキルを持った人材を柔軟に確保できるため、即戦力の確保やリソース調整がしやすいという特徴があります。
外注には、雇用契約を結ばない「業務委託(SESやフリーランス)」と、労働者派遣契約に基づく「派遣」があり、それぞれ契約形態や管理責任が異なります。
派遣
派遣は、派遣会社に雇用されたエンジニアが、派遣先企業で働く形態です。労働者派遣契約に基づき、指揮命令権は派遣先企業にあります。短期間での人材確保が可能ですが、契約期間の制限や、派遣法による規制があります。
SES(システムエンジニアリングサービス)
SESは、SES企業と雇用契約を結んだエンジニアが、クライアント企業に常駐して業務を行う形態です。準委任契約に基づき、指揮命令権はSES企業にあります。スキルマッチした人材の提供が可能です。
フリーランス
フリーランスは、個人事業主として企業と業務委託契約を結び、プロジェクト単位で業務を請け負う形態です。高い専門性や柔軟な働き方が魅力ですが、契約・労務・セキュリティリスクを企業側が負う必要があります。
SES契約と派遣契約の違いについてはこちらの記事をチェック!
直接雇用と外注、それぞれのメリット・デメリットとは?
直接雇用(正社員)
- メリット:長期的な戦力として育成可能、組織文化への定着
- デメリット:採用までに時間がかかる、採用後のミスマッチリスク、固定人件費が発生
外注(派遣・SES・フリーランスなど)
- メリット:短期間でアサイン可能、即戦力の確保、柔軟な契約形態
- デメリット:ノウハウの蓄積が限定的、マネジメントコストがかかる場合も
フリーランス・SESの契約時に企業が意識すべきポイント
フリーランスやSESを活用する際には、導入のスピードや柔軟性といった利点がある一方で、契約・運用面でのリスクも存在します。ここでは、企業側があらかじめ把握しておくべき点を紹介します。
1. 契約内容と責任範囲を明確にする
とくにSES(準委任契約)の場合は、「指揮命令権の所在」や「成果物責任の有無」が曖昧になりがちです。トラブルを防ぐためにも、作業範囲・稼働時間・進捗報告の方法などを契約書内で明文化しておくことが重要です。
2. フリーランスとの契約は成果管理が肝心
フリーランスは基本的に業務委託契約となり、成果物ベースまたは時間単価ベースでの発注になります。納品物の基準、スケジュール、検収条件などをあらかじめすり合わせておかないと、トラブルの原因になりやすい点に注意が必要です。
3. 機密情報・セキュリティ対応を事前に設定
外部エンジニアに社内システムや顧客データへアクセスしてもらう場合、秘密保持契約(NDA)の締結は必須です。また、アクセス権限の制限やPC貸与の有無など、情報管理ルールも社内規程に沿って整備しておきましょう。
4. 契約終了後の引き継ぎ体制も検討
フリーランスやSESの契約終了時に、ノウハウが属人化したまま残るリスクがあります。ドキュメントの整備、正社員への知見移管、共同開発期間の設定など、終了後を見越した対応策も重要です。
これらのポイントを事前に押さえておくことで、外部人材の活用による効果を最大化し、契約トラブルや品質低下のリスクを最小限に抑えることができます。
外注手段の違いを整理する:「派遣・SES・フリーランス」の比較
項目 | 派遣 | SES | フリーランス |
---|---|---|---|
契約形態 | 労働者派遣契約 | 準委任契約 | 業務委託契約 |
指揮命令権 | 派遣先企業にあり | SES企業にあり | なし(受託側にあり) |
契約期間 | 短期〜中期(3ヶ月〜1年) | 中長期(6ヶ月〜数年) | 案件単位(期間は自由) |
コスト | 安定しやすい(時間単価) | スキルにより変動 | 成果物単価 or 時間単価 |
管理負担 | 派遣会社が一部担う | SES会社が対応 | 企業側が直接管理 |
採用課題ごとのエンジニア正社員採用と外注の使い分け
企業のエンジニア採用においては、中長期的な戦力となる正社員の直接採用が基本とされています。しかし実際の現場では、常に理想どおりに採用が進むとは限りません。
たとえば、立ち上げを急ぐプロジェクトや、高度な専門スキルが求められる業務、採用活動が長期化しているケースなどでは、外注(派遣・SES・フリーランス)を柔軟に活用することが非常に有効です。
また、直接採用と外注を併用することで、外部からノウハウを取り入れて社内に技術を定着させたり、採用戦略そのものを見直したりする機会にもなります。一時的な増員や予算制約下でのテスト導入といった局面では、外注ならではの機動力が大きな武器になります。以下に、採用課題ごとのエンジニア正社員採用と外注の使い分けについて例をあげます。
ケース1:急ぎでプロジェクトを立ち上げたい
採用活動の長期化がボトルネックになるこのケースでは、外注(派遣・SES)が有効です。すぐに稼働できる即戦力を確保でき、開発スピードを落とさずに済みます。
ケース2:社内に技術を定着させたい
中長期的な視点が求められるなら、直接雇用がベース。ただし、外注からノウハウを取り入れながら組織を育てていく併用スタイルも増えています。
ケース3:社内に特定スキルを持つ人材がいない
クラウドネイティブ、AI、セキュリティなど、高度スキルが必要な場面では、その分野に強い外部エンジニアとの契約が現実的です。
ケース4:エンジニア採用が何度も失敗している
入社後のミスマッチや早期離職が続いている場合、まずは外注でプロジェクトを回しながら、業務内容や必要スキルを見直すのが有効です。その上で正社員採用を再構築することで、採用精度を高められます。
ケース5:限られた予算で最大の成果を出したい
初期費用を抑えつつ成果を求めるなら、一定期間の外注で試験導入し、業務が安定してから直接採用へ切り替えるハイブリッド型がおすすめです。費用対効果の検証にもなります。
ケース6:リリース前後の短期的な増員が必要
繁忙期だけ一時的に人手を増やしたい場合は、契約期間の調整がしやすいSESやフリーランスが適しています。柔軟な稼働調整により、コストを最小限に抑えながら人材を確保できます。
以上より、直接採用をベースとしながら、目的や状況に応じて外注を戦略的に組み合わせることが、エンジニア採用を成功させるために有効です。
機械学習エンジニアの正社員型派遣参画事例
ここでは、「ケース3:社内に特定スキルを持つ人材がいない」を満たした有効例として、ラクスパートナーズの機械学習エンジニアの参画事例をご紹介します。
派遣先企業
医療AI企業
背景・課題
医療データ解析プロジェクトが進行中だったが、少数データ・クラス不均衡など医療データ特有の課題に対応できるAIエンジニアが不足し、研究開発の進行が停滞していた。
対応内容:
- CT画像と超音波画像の統合解析に対応するマルチモーダルモデルを構築
- クラスのアンバランス対策(アップサンプリング・重み付き損失関数)を実施
- Python/PyTorch/SegFormerなどを活用し、モデルの精度を大幅に向上
成果:
- 予定よりも早く研究成果を創出し、次フェーズへの移行が実現
- 医療AIモデルの実装とデータ処理改善により、プロジェクト進行が大幅に加速
他エンジニアの参考事例はこちら!
まとめ
エンジニア採用は「直接雇用 or 外注」の二択ではなく、目的やタイミングに応じた最適な手段を使い分けることが、今の時代には求められます。
採用が難航している、スピード感を持ってプロジェクトを進めたい――そんなときこそ、外部パートナーとの連携を検討するタイミングです。
当社では、現場にフィットする正社員型のエンジニア派遣やチーム派遣をご提案可能です。必要なスキル・期間・稼働条件に合わせて柔軟に対応いたします。まずはお気軽にご相談ください
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